中畑和夫
いきなり普通の名前をフルネームで言われても...って感じですが、逆にこれだけでわかっちゃう人はけっこうフリークな人ではないでしょうか。
そう、あの『北の国から』で(おそらく)ダントツの人気を誇るであろう「中畑木材工業の社長」です。
五郎さんの無二の親友で、純や蛍にも我が子のように接し、色んな面で黒岩家をしっかり支える頼れるおじさん。もう、大好きです。
面倒見がよくて世話好き、お人好し。人情に厚くて涙もろい。もう、典型的ないい人。ある意味「ずるい」キャラクターと言えるかもですね。
劇中で、五郎さんはいろんなことを中畑のおじさんに相談します。中畑のおじさんは、決して素敵なアドバイスを口にしたりはしません。むしろ寡黙に、五郎さんの言葉をじっと聞くだけです。ひとしきり話を聞き終わったら、まずニコッとはにかむように微笑んで、「ゴロさんもたいへんだなぁ」なんてしわがれ声でぼそっとつぶやく...実際にそんなシーンがあったわけではありませんが、なんかそんなイメージなんですよね。
まさに、河島英五の『時代おくれ』の人、そのままです。
昔の友には やさしくて
変わらぬ友と信じ込み
あれこれ仕事もあるくせに
自分のことは後にする
(河島英五『時代おくれ』より)
そんな中畑のおじさんの一番好きなシーンは、やはり五郎さんに自分の奥さんのガンの話を打ち明ける、あの名シーンです。素晴らしすぎます。もう、思い出しただけで涙が...。
リョウ・リャンキ
今回は邦画でも人気の高い『スワロウテイル』に登場する「リョウ・リャンキ」です。
この作品のこの配役、江口洋介さんが実にいい感じの悪役を演じておられます。
特に、最初の登場シーンで「指をピストルにしてしまう」あの演技は、秀逸です。観ているうちに、江口さんの指がいつの間にか本物のピストルに見えてしまうという、演出の巧みさもさることながら、江口さんの演技あっての名シーンでしょう。
たいへん失礼ながら江口さんの演技に対しては、それまではいわゆるトレンディドラマに類いするチャラ系のキャラクターを演じることが多く、演技も大味っぽい印象があったんですが、このリョウ・リャンキ役はなんというか、役者としての底力を見せつけてくれました。
『スワロウテイル』での江口さんの演技は、さり気ない仕草にもきちんと「リョウ・リャンキらしさ」が備わっていて、変な言い回しになりますが、「演技している感」が感じられませんでした。つまり、あたかも本物のリョウ・リャンキがそこにいるような、実にリアルで自然な演技に、すっかりやられてしまいました。その圧倒的な存在感は、まさに感服もの。
そんなリョウ・リャンキの一番好きなシーンは、やっぱり「クビキレ」と面倒くさそうに言い捨てる、あのシーンです!
ゴトー
さぁ、『HUNTER✕HUNTER』からはゴトーさんの登場です!
言わずと知れた、キルアの生家ゾルディック家の執事長。
キルアを訪ねたゴンたちに足止めをくらわせ、コインゲームで勝負を挑んだ、あのゴトーさん。
キルアへの偏執的なまでの忠誠(というよりは溺愛に近いかも?)のあまり、ゴンたちにガチンコで挑みますが、ゴンの超人的な能力と、なによりもキルアへの真摯で純粋な友情に、おそらくは自分と同じ匂いを嗅ぎ取ったのか、最後にはキルアの未来を託すまでにゴンたちを信頼するほどになります。
さらに言えば、ゴトーさんほどの人がそれほどまでに忠誠を誓えるということは、それだけの「なにか」がゾルディック家に、ひいてはキルア自身にあるのだということかもしれません。
ゴトーさんの一番好きなシーンは、ゴンたちにキルアを託してお別れをする、あの「おじぎ」。目に焼きついて、離れません。
内海課長
さぁ!内海課長ですよ!
あの『機動警察パトレイバー』で痛快なキャラクターを存分に見せつけてくれた、あの内海課長。もう、大好き!
へらへら笑いながら、とんでもない悪事を一切の躊躇も逡巡も持たずにやってのける、企画力と実行力。ほんとうにシャープな頭脳と強いハートの持ち主。でも笑顔。素敵。
でも今になって考えると、彼には常人なら悪に対して感じてしまう後ろめたさや良心の呵責が、あまりにもきれいに抜け落ちているように思えます。もちろん、漫画のキャラクターなんだからと言ってしまえばそれまでですが、そこで思考停止せず、ちょっとだけ深読みしてみましょう。
想像できる範囲で考えてみたとき、悪に対する抵抗力が摩滅している場合、やはり考えられるのは「より大きく深い悪を経験することによる良心の麻痺」が思い浮かびます。
人は、初めて万引きをするときにドキドキしますが、何度も繰り返しているとだんだん慣れてきて、普通の仕草と同じように万引きできてしまう。その何百倍ものスケールで、内海課長の過去は大きく深い悪や修羅場を実体験してきたのではないか、と。
実際、少年の人身売買や武器の密輸、テロリストの手配や指揮管理など、単なる犯罪を超えた悪事を淡々と、しかも楽しげにこなしてしまうその奥に、なんか「凄味」を感じてしまいます。
あのヘラヘラ顔に隠された内海課長の壮絶な過去を、知りたいような知りたくないような...なんとも奥の深いキャラクターです。
そんな内海課長の一番好きなシーンは、二つ。電話で徳永専務に「あんたが悪いよ。」って言い放つシーンと、「頭は優位に立ったときこそ下げるもんだ」と黒崎くんに“訓戒”を垂れるシーン。大好き。
ビュコック提督
言わずと知れた『銀河英雄伝説』。
数多に登場する人物たちの中でも、特に好きなキャラクターの一人が「アレクサンドル・ビュコック」です。作中では「ビュコック提督」の方が通りがいいかもしれません。また、人によっては「ビュコック爺さん」なんて呼んだりもするそうで。いいですね。
さて、ご存知のように『銀英伝』では、主に二十代から三十代の若き才能がぶつかりあう壮大な群雄劇なのですが、そのほとんどが天才・秀才のオン・パレードでありまして、ラインハルトやキルヒアイス、ヤン・ウェンリーはもちろん、あらゆる主要人物がとにかく「できる」人たちなわけです。
そんな中で、ビュコック爺さんは数少ない「普通の人」でして、そこがとにかく親近感を覚える最大の要因ではないかと思われます。とはいえ、「二等兵からの叩き上げ」で司令官までなる人ですから、もちろん優秀な逸材ではあるのでしょうけれども、やはり印象的にはずーっと「こっち側」の人ではないかと。
さらに加えて、「お人柄に甘えて申し上げますと、わたくしもビュコック閣下が好きですわ」とまでフレデリカに言わしめる好々爺然とした人格は、これはもう『銀河英雄伝説』の中の「癒やし」のキャラクターなのではないでしょうか。
そんなビュコック爺さんの一番好きなシーンは、やっぱりスーン・スールズカリッターの名前をごにょごにょごまかす、あのシーンです!